ヴィレヴァン全店まわるひと、愛にあふれる株主総会レポ「ほんとしんどい」でも続ける理由

こんな記事です:ヴィレッジヴァンガードの「株主総会レポ」を毎年書く株主にインタビュー。/「むちゃくちゃつらい」のに書きつづけるのは「ある読者」のため。/ヴィレヴァンへの愛、その原点とは。
アトヨミ編集部 2026.06.22
誰でも
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ああ、これが本当の資本主義っていうやつなのかもしれない。ヘイトやフェイクの巣窟になったと言われる「X」で見つけたヴィレヴァン全店まわるひと(@village_vanvan)の「株主総会2025レポ」。経営再建に向き合うヴィレッジヴァンガードコーポレーションの株主総会を、愛憎織り交ぜながらレポートする姿に否応なく心が動かされます。利益偏重の行き過ぎた資本主義をただす。それを資本家である株主として、資本主義のルールの中でやってのける。どんな思いで、この長大なレポートを書き連ねたのか。本人に聞きました。

しつこく読んでくれる人がいる

「あんまり見られないですが、レポート書くのは、むちゃくちゃつらいです」

ヴィレヴァン全店まわるひとは、率直にその大変さを認めます。プロの投資家ではなく、ヴィレヴァン好きが高じて株主になっただけ。専門用語が飛び交う株主総会の文字起こしを、誰にも頼まれたわけでもなく続ける負担はかなりのものだそうです。

普段の投稿は、ユニークな商品やお店の紹介で、そっちの方がぶっちゃけフォロワーの反応はいい。たとえば、伝説となった〝ありえない風味〟のポテトチップスの試食レポートは、2万を超えるリツイートを記録。一方、「株主総会2025レポ」の中には、100に届かない投稿も多い。わかりやすく雲泥の差です。

つらいのに読まれない。わかっていながら、毎年のように株主総会レポートを続けるのはなぜか。それは「従業員のため」だと言います。

1986年に名古屋市で創業したヴィレッジヴァンガード(ヴィレヴァン)は、「遊べる本屋」をキャッチコピーに、書籍に雑貨を組み合わせたユニークなコンセプトが時代をとらえ、1990年代後半から2000年代前半にかけて大きく成長しました。2014年には店舗数が400店を超え最盛期を迎えますが、その後は急落。近年は大量閉店と利益の急激な減少に悩まされています。

2025年の株主総会は、経営陣が24.7億円の特別損失について説明するなど、深刻な経営課題に注目が集まりました。

「店舗をまわると、従業員の人たちから『読んでます』と言われるんですよね。会社の体制とか、自分が投稿した株主総会レポートで知ることが少なくないみたいです。経営が大変な中、店舗で働く従業員の人たちのキャリア形成や、ヴィレヴァンで働く上での指針に少しでもなれるなら……。そんな思いで、むちゃくちゃつらいんですが続けています」

実際、大きなバズにはならないけれど、一定の人が最後まで読んでいることは数字にも表れているそうです。

「先行きを心配している従業員が、しつこく読んでくれているのがわかる。11回に分けて書いたレポートは初回から最終回まであんまり数字が変わっていないんです。そこから、ヴィレヴァンが注目を集めるような新しい動きが生まれるとうれしいです」

拡大路線の先に待っていた不振

そもそも、なぜヴィレヴァンは経営不振に陥っているのか。株主でもあり、文字通り全店まわってきた、ヴィレヴァン全店まわるひとは「複合的なもの」とした上で、「個性が削がれてしまったことは大きい」と指摘します。

ヴィレヴァンの真骨頂といえば、夢野久作らの奇書から、オカルト、パロディグッズなど、「これ売っていいの?」というギリギリをついた個性的な棚です。それが、イオンなどショッピングモールへの進出によって、客層が広がったことで制約を受けます。家族連れなども訪れる立地の店舗では攻めた棚が作れなくなっていきました。

急成長によって店舗数は拡大し、地方にもヴィレヴァンの名前が広まることになったのと引き換えに、ヴィレヴァンらしさが失われていってしまったのです。

そんな現状は株主総会でも議論になりました。かつての個性的なヴィレヴァンを支えた中堅社員が辞めていること。その結果、売り場づくりのノウハウが失われていることなどについて、ヴィレヴァン全店まわるひとは「ほんまなんとかしたって〜」とレポートで訴えています。

拡大による個性の埋没。経済合理性を選んだことによる画一化。それは、成長を追い求める資本主義がはらむ問題を象徴しているかのようです。今、ヴィレヴァンが力を入れるのが、アニメのキャラやユーチューバーとのコラボによるPOPアップショップの展開です。強力なIP(Intellectual Property=知的財産)を活用した施策は、一定の集客力が保証されているため、安定的な収益が期待できます。一方で、個性的な店舗というヴィレヴァンらしさは、ますます薄くなっていくリスクをはらんでいます。

ヴィレヴァン全店まわるひとは「僕らからしたらさびしい思いはあります」と、IP活用への思いを率直に語ります。その上で「でも、現場にいる従業員の人たちはがんばって取り組んでいる。そこを否定したら何も生まれなくなってしまう」と強調します。

「新しい仕掛けが、若い人が店舗きてくれるきっかけになり、店の奥にある昔の〝やばい商品〟に出会ってくれるなら、それはそれでうれしいこと」

時代に合わせたヴィレヴァンらしさを考えるその姿勢は、どこまでも、ヴィレヴァン愛にあふれています。

サブカルの出会いくれた原体験

だからでしょう。経営不振の会社の株主総会であるにも関わらず、レポートを通じて伝わってくるのは会社の建て直しを心から願う前向きな気持ちです。例えば、株主に見せるパワポが見にくいことを指摘され、それに対して改善を約束する経営陣について一言。

「頑張って」

経営陣は株主や従業員ともっと向き合ってほしい。密なコミュニケーションをとってほしい。一方的な非難では終わらない、前向きな突っ込みは、読後感爽やかな株主総会レポートという唯一無二の世界観を生み出しています。

「ネットは悪い意見の方が目立ってしまいます。ニュースでも拡散するのはマイナスなことばかり。従業員の人たちにはつらい思いをしてほしくないんです」

なぜ、そこまでヴィレヴァンを愛せるのか。それは地方出身であるヴィレヴァン全店まわるひと自身にとってサブカルに目覚める機会をくれた原体験があるからです。

「今のようにネットもスマホも発達していなかった時代、情報が本当に少なかった。電車に乗って都会に行くのにもお金がかかる。そんな地方の若者にとって、ショッピングモールに入っているヴィレヴァンは貴重でした。今はつまらないと言われることが多いイオンモールのヴィレヴァンですが、古い店舗ほど、ユニークな商品が売れ残っていて逆に面白いんです。地方でも面白い体験をさせてくれる。そういう情報を紹介していきたい」

応援したい企業にお金を出資し、その活動を支える。その企業が成長すれば対価を得られるけれど、それは結果に過ぎない。それが本来の資本主義およびそれを支える株主会社の土台だったはず。それが今では、株価の数字が企業価値のすべてになってしまっている。働く従業員や、何より社会に対する企業の活動が評価されない。資本主義の限界と言われる昨今の状況に対し、ヴィレヴァン全店まわるひとの「株主総会2025レポ」は、強烈なカウンターパンチを食らわせています。

行き過ぎた資本主義に対しては、環境や社会に対する企業の姿勢を投資の判断材料とするESG投資や、従業員の持つスキルや意欲を会社の資産として見る人的資本の考えが注目されるなど、新しい動きも生まれています。ヴィレヴァン全店まわるひとの株主総会レポートには、それら最新の動向を先取りしたかのような視点や指摘にあふれています。

2025年6-11月期の決算では、8年振りの黒字となったヴィレヴァン。早くも次の株主総会が気になるところです。株主総会レポートの最終回では「まーじで疲れた。この文章量で毎年は無理よ」とつぶやいたヴィレヴァン全店まわるひと。気になる次回は……。

「店舗の彼らが望むならやるしかないですね」

(奥山晶二郎)

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